久々にこのブログへ戻ってきた。
インスタなどの発信媒体が世の中に溢れている昨今だが、SNSは消費される速度が半端ない。
やはり、自社メディアとして自らの発信を自らの媒体でするべきなのだ、そういう考えに至った。
そんなわけで、モリノ復帰。
ある時から当ブログの記事は新人に任せていた。
頑張ってセッティングしている姿が目に浮かぶ
久しぶりにチェックしてみると、前回の記事が「カフェをオープンしました」というエイプリルフール記事。 チェックしてなかったんかい。
今は6月も末。これ自体がなんのエイプリルフールだろうか。
責めるわけではない。インスタの発信に力を入れてくれていたから、それでいいのだ。一人でなんでも完璧にできるものではない。
復帰するにあたって、デザイナー側の素の姿を語ろうと思った。タイトルの、Designers Voiceと称して。
昔からこの中の人ブログを読んでくれていた人は、ここまで読んだだけでも気づいたかもしれない。
なんか文章のテンションが違うぞ。
実は自分の過去の記事を読んで、違和感を感じた。
多方面に気を遣いながらいかに面白く見せようかと試行錯誤している様を文脈から感じたのだ。
そういうのはもう疲れた。それで本質を語れるのだろうか。
そうだ、世の中はきっと本質や自然体というものを求めている。
私は元来、一定のテンションで淡々と喋るタイプだ。感情の浮き沈みがあまりない。
その雰囲気が落ち着くと言ってくれる奇特な人もいれば、何を考えているか分からないという人もいる。
どちらかというと後者の方が多い。世間は残酷である。
しかし、やはりこのテンションの方が自分の考えていることや素の姿をそのまま投影できると思ったのだ。
ありのままの姿見せるのよ。というやつだ。
前置きが長くなったが、新柄が出る。
その新柄も、見た目のスタイリングだけでなんとなくウケそうな色柄を描いているわけではない、という話をしたい。
今、CHAORASの手ぬぐいは登山、ハイキング、トレランのシーンで支持を受けている。
tetsuroumorinoさんのインスタグラムより。
コロさんによって密にならない外遊びに行く人が増え、アイテムの機能性もだけど、どうせやるなら個性やお洒落も楽しみたいよね、というニーズにCHAORASは入り込んだのだ。たぶん。
企画者である私も、もちろん山を楽しむ人間だ。
これまでも何度かフィールドレポ的な記事を上げてきたが、悲しいかなそういう記事は往々にして閲覧が伸びない。
誰も中年のおひとり山遊びに興味はないのだ。
だがしかし、中の人絶対アウトドアやってないよね、山行ってないよねというウソくさいブランドと世間に認識されないためには、こういう発信も必要なのだと自分に鞭打つことにした。
本題。
CHAORASのデザインを起こすとき、毎回色やパターンを考えないといけない。通常のプロダクトデザインと違うのは、描く要素が非常に大きい。
そしてファッションだけを追っかけていると、商品になり得る色やパターンはすぐに底をつきてしまう。デザイナーと言えど、自分の中だけから出てくるものには限りがあるし、無いものは出てこない。
ではどうするか、そんな私は色や柄は自然の遊びの中から着想を得ることが多い。
ブナがきれい。の図
しかし自然から得た着想をそのままストレートに形にすると、ただ自然の絵を描いたてぬぐいや、下手をすれば野人のコスプレが出来上がってしまう。
感じたイメージを自分というフィルターを通して人々のスタイルに取り込めるデザインに編集する必要がある。
今回、タイダイ4種が新たにリリースされる。今回はこのタイダイのカラーリングを紹介しよう。
①タイダイ グリーンxグレー
先日、紀伊半島の秘境大杉谷へ行った。
まんまこのイメージ。見てこの水の色。すごい。
コーヒー飲みたくなった。そうだ川の水で淹れよう。野生児の発想である。
お決まりの場所でコーヒーを飲む。なぜ猫背。
大台ヶ原を源流とする清冽な大杉ブルーが美しい。この巨岩と清流のコントラストを表現したいと思った。この色の組み合わせ、タイダイのカラーとして普通にいけるんじゃね?と。コーヒーを飲みながら、この背中はおそらくそんなことを考えているはず。
ここ大杉谷は、考え事ばかりして足元が疎かになると滑落しそうな場所がいくつもある。
スマホばかり見て駅のホームから落ちる的なアレだ。
ながらスマホで落ちるところ。ただしここは電波入らない。
ながらスマホなどと冗談言っているが本当に滑落の危険がある。特に雨や滝しぶきで濡れている時は要注意だ。
行かれる方は注意していただきたい。
しかしこの岩と清流と滝を見るだけでも何度も訪れる価値のある場所だ。もう大好き。
行程は大杉谷登山口から時間の関係で七ツ釜滝までピストン。
ガイドでは11時間の行程を、休憩含め6時間でピストンした。
七ツ釜滝。普通なら登山口からおよそ5時間を要する。もっと奥まで行きたかった。
大杉谷ハイクの話は長くなるので、またの機会にしよう。その機会はいつ来るかわからない。
再度言うが、中年男性のおひとり山遊びコンテンツは本当に需要がないのだ。
②タイダイ ブルーベージュ
野生のデザイナーは山だけでなく海も大好きである。
よく訪れるのが京丹後や但馬地方〜鳥取の浦富海岸。その自然環境の美しさや僻地感が大好きで、釣りにキャンプに素潜りにと、気がついたらなぜかよくそこにいる。
この地域の浜は、「海が綺麗なのに人が少ない海水浴場ランキング」というランキングの上位常連だ。
その中でも好きな浜の、まさにこの感じだ。
tetsuroumorinoさんのインスタグラムより。
海開き前のほとんど人のいない浜で、夕焼け空になる頃に一日中好き放題遊んだ子どもたちの砂を払いながら、そうだ新色はこの感じにしようと思い立つ。そんなノリでデザインが決まった。
夕暮れ時はこんな感じになる。もう下界に戻りたくなくなるやつ。
タイダイのパターンも穏やかな海のようにさざ波イメージにした。ただし冬は荒れに荒れる。さざ波などでは全くない。
ベージュがアウトドア定番のコヨーテカラーのようで、鮮やかな青色と相まってかなり新しい感じだ。
タイダイってだけでファッションアイテムにも取り入れやすい。タイダイの有能さを感じる。
ちなみに上記ランキングには、真逆の「海が汚いのに人が多い海水浴場ランキング」というのもある。
こちらについては下手に触れないようにしておこう。
興味ある人は調べていただきたい。
③タイダイ カモ
カモ柄イメージのタイダイは以前もあった。
その時の染色パターンは訳あって廃盤になったが、再販を望む声も多かった。そこで染色パターンを変えて再リリースとなった。
車で言う、ビッグマイナーチェンジというやつだ。
一体何がビッグなんだろうか。
カモ柄は様々なパターンが溢れている。カラーリングもまさに山や自然を主張するカラーで今更そこに踏み込む余地はない。
カラーはお決まりの組み合わせでいい。どんなパターンにしようかと山で遊ぶ。
ハンモックに揺られながら、魂が抜けている。
ふと思う。木の皮って、すごく造形的なパターンだよな。
タイダイパターンのモチーフが決まった瞬間だった。それはまさかのハンモックをくくりつけていた杉の木になった。
屋久島へ行って屋久杉を見てきました!
とか言えたらもっとインパクトあったのだろうが、インスタのキラキラ女子のような生活は送っていない。嘘を書くわけにはいかないのだ。
屋久杉ではない。京都の清滝の野良の杉だ。そしてなんか疲れている。寝起き。
④タイダイ パステル
カラー展開的に、パステル系は欲しいと思っていた。
空の青さと雲の白とかいいよなと思っていたが、その2色ではうっすい色合いのアイテムになってしまい、商品として成り立たないだろう。
tetsuroumorinoさんのインスタグラムより。
しかし空と雲そのまんまやる必要はない。その色を取り入れるだけでストーリー性はあるじゃないか。
事務所で過去のサンプルを掘り返す。イメージした水色の入った組み合わせの配色パターンが出てきた。これいいな。いいカラーリングだ。このまま行こうと思った。
途中から完全に偶然とフィーリングだ。そういう時もある。
7月になると思うが、追ってプリントのデザインも2柄リリース予定。
こちらもちゃんとストーリーがあるので、その時に紹介しよう。
CHAORASのてぬぐい、結局は見た目の好みから選んでもらっていい。貴方のスタイルやウェアのカラーリングに合わせるチョイスでいい。
ただ伝えたかったのは、そのデザインは事務所の机に座ってネットを眺めながらインドアの人が決めているのではないということ。
リリースされるアイテムのその背景にはいち中年男性の外遊びが詰まっ、
いかん、生々しい。言い直そう。
その背景には山や海を愛するデザイナーのアートワークが込められているのだ。
ここまで読んでくれたあなたにオススメ。